漂う妖気 うねる刃文・・・刀  無銘  伝長谷部国重

長谷部国重は刀工集団、長谷部一派の始祖。南北朝時代を代表する山城国の名工として知られる。鑑定で、織田信長が黒田官兵衛に贈った国宝の刀「へし切長谷部」【福岡市博物館蔵)の作者とされている。

ぎらぎらと妖気が漂うような、奥底から発する迫力がある。波形にうねる刃文は、にわかにかき曇る空のようだ。つぶさに眺めると、黒い地肌に飛び地のように白っぽい模様がある。

もとはかなり長い太刀だったようだが、江戸時代に持ち手側を切って短くする「磨り上げ」が行われたらしい。切っ先は大きく、しかも鋭くとがっている。いかにも「太平記」の時代に生まれた豪壮さがある。

作者とされる長谷部派の始祖国重は、鎌倉で名工中の名工と言われる正宗に入門したと言われ、後に京都で活動した。この刀に銘はないが、派手な作風から、国重作と鑑定されたとみられる。不属する慶安元(1648)年付の鑑定書には「大判金20枚分の価値がある」と書かれていて、当時は紀州徳川家の所蔵だったが、ほどなく水戸徳川家に贈られたらしい。